meme と Internet meme(ミーム)

ミーム(meme) という言葉は、1976年にClinton Richard Dawkins 博士(1941年生まれ)がThe Selfish Gene(『利己的な遺伝子』)を著すに当たり作られた混成語です。この辺の経緯は、Wikipedia に詳述されているので そちらに譲りますが、meme の定義や概念は、非常に緩いです。 Dawkins 博士は比喩を沢山使う人だったことも、その理由かもしれません。


抑えておくべきは、遺伝子ではないのだけれど、遺伝子のように受け継がれ、進化していく、という点です。


上述の ドーキンス博士の著書では、”cultural mode of transmission that works by replication and succeeds through imitation" と、meme を説明しています。


幸島の『百匹目の猿』現象も memeと言えるでしょう。


ミーム学の研究者は、Douglas Richard Hofstadter、Daniel Clement Dennett III、Richard Brodieなどが後に続きました。


この方々、どなたも とても Interesting な方々で、meme の生物学的、哲学的、宗教学的見地からの考察は全部読みたくなります。


3番目の Richard Brodie さんは、実は 元Microsoft の社員で MS-Word の開発チームにいた人です。


彼の有名な著書のタイトルは、Viruses of the Mind:The New Science of the Meme であり、その邦題は『ミーム ― 心を操るウイルス』です。


そう、ミームは ウィルス、と、、。



昨今、Internet 上で使われている meme (Internet meme) の意味を極々簡単に解説すると、

”ファッション、食べ物、飲み物、音楽、許せない事件、かわいいネコ画像、オモシロ動画” などを指します。


これらの文化的な情報は、一人の脳から別の人の脳に、遺伝子という手段をとらずに複製されていきます。


ざっくり言うと、人の真似をする、とかです。


日本で ネットでどんどん拡散されていくことを 「バズった」などと言いますが、英語では "went viral" と表現します。 


この viral という言葉は、virus の形容詞形です。

ここで、上述の Richard Brodie 氏の本のタイトルとも繋がりますね。


meme という単語は Google Trends を見ると、2016年に隆盛するのが分かります。

これは、Cincinnati Zoo の Harambe の事件に端を発した Internet memeです。(=子供がゴリラの檻に落ちる事故があり、Harambe という名のゴリラが射殺された)


日本は 2019年には タピオカ・ブームがありました。 あれも、最初は誰かが仕掛け、一人の脳からもう一人の脳に「タピオカ、おしゃれ!飲みたい!写真撮って友達に見せたい!」という思考が ”伝染”していった meme の1つと考えられるわけです。


2020年には coronavirus の meme が発生しました。 #stayhome とか、ですね。

そして コロナの感染者数が一旦 収まりを見せた後に起きた BLM の movement。。


この アメリカに始まり世界に広まった movement を受け、2020年6月22日、Johnson & Johnson は、美白製品を一部販売中止することを決定し、公表しました。


自然な肌の色より白い肌の方が美しいという価値観を強調してきたのではないかという外部からの批判と内部からの反省があってのことのようです。


更に、25日には、ユニリーバが、商品の名称に「色白」や「ホワイトニング」などの表現の使用をやめると発表しました。


こういう社会の流れを考えると、アジア人が髪をブロンドに染め、カラコンで碧眼にしたりする今風のファッションは、白人優性・有色人種劣性という意識が根底にあることから生じている meme とも考えられないでしょうか。


「そんなぁ。大袈裟だよー」「美白が差別なんて、過剰反応なんじゃないの?」という声も聞こえてきそうです。


ですが、国際社会に身を置くと、そうとばかりも言ってはいられません。


自分を国際社会の中の一員、と積極的に捉えることが出来るか否かで、見え方が違ってくるのではないでしょうか。。


美白に関する是非も、Johnson & Johnson の決断の是非も、私たち各々が自分自身の答えを出せばいいと思います。


大切なのは、一人一人が ここで一旦立ち止まって考えてみる・・ということです。


地球規模の様々な問題を、自分のこととして責任を持って考えてみるタイミングなのだと思います。


"Ignorance is a sin" (無知は罪)という表現があります。


少し厳しい言い方をすれば、島国日本に住んでいて 国際情勢がよく分からないからといって naive でい続けるのは 罪だと思います。


黒人に対する差別問題は、少しベクトルが変われば、有色人種である日本人にだって降りかかってくるかもしれない火の粉です。


わたくし事になりますが、海外に人生の半分も暮らしていると、差別されることはあります。

ふり返ってみると、何度かありました。冷静に記憶を辿ってみると、巷によくある ”いじめ”だったのかもしれません。


でも、アジア人だから標的にされたことは間違いないと思います。人種差別は蔓延しています。


今まで、一々、誰にも報告したことはありませんが、私たち日本人だって差別されることはある、、ということです。


シンガポールを作ったあのリー・クアン・ユーさんでさえ、差別を受けたことがあり、その経験について自叙伝に書いています。


TVをつければBLMのニュースが毎日流れてくる、、、そんな或る日、同じく20代から海外に暮らす友達にも 初めて訊いてみました。


私: 「ね、差別されたことってある?」

友人:「そりゃ、あるよーー 」 

私: 「だよねーー」



このエピソードを聞いて(読んで)

「えー、日本人って外国では差別されてるのーー?」と驚きますか?


翻って、日本人はどうでしょうか?


私たち日本人は 特定の国や地域の人を差別をすることは全くない、と言えるでしょうか?


もし私たちが、地球から差別をなくしたい!と願うなら、私たち一人一人が価値観を見つめ直してみることが、初めの一歩になるかもしれないと思うのです。


Keep すべき価値観と手放すべき価値観を with corona の今、整理し直し、行動を変えていく必要があるのかもしれません。


6月26日に、Elon Musk さんが、"Who controls memes, controls the universe." と tweet していました。


『ミームを制する者が宇宙を制する』


ミームと宇宙を "control" するのは、誰なのでしょう。

政治家?

国家首長?

マスコミ?

企業のトップ?

セレブ?

一般人のだれか?

・・・それとも、、、AI? 


この記事の後半は、Internet meme に関して書きましたが、meme の正式な概念に興味を持たれた方は、スーザン・ブラックモアの『ミーム・マシーンとしての私』をお読みになってみてはいかがでしょう。この本は、ドーキンス博士お墨付きのミーム学入門書です。



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